ブラジルのギャンブル広告、規制か共存か？業界が直面する選択

広告規制強化の動きに業界が揺れる

ブラジルではオンラインベッティング市場の合法化から半年足らずのタイミングで、ギャンブル広告に関する新たな規制案が進行中です。上院で可決された法案2985/2023は、ライブスポーツ中の広告禁止や、有名人・アスリートを起用したマーケティングの制限を含んでおり、現在は下院での審議を控えています。

「全面禁止」は回避されたが…

法案の報告者であるカルロス・ポルチーニョ上院議員は、当初案にあった全面禁止を撤回したものの、現行の案も業界にとっては大きな制約となり得ます。実施は2026年以降と見込まれていますが、既に関係者からは懸念の声が上がっています。

現行ルールは十分か？意見が割れる専門家たち

既存の広告ガイドライン（SPAの規則1231号）は、未成年への訴求禁止や「18+」マークの明示、責任あるギャンブルの促進などを義務付けています。

弁護士のルイス・フェリペ・マイア氏は「新興市場にしては妥当な水準」と評価し、「認知を広げる段階では過度な規制はむしろ逆効果」と指摘。一方、BetsulのCEOフェルナンド・ガリータ氏は「明確で一貫性のある規定が必要」との立場です。

影響力のあるインフルエンサー広告が問題視される背景

2024年に物議を醸した「Fortune Tiger事件」では、違法サイトを宣伝したインフルエンサーが摘発され、大きな社会問題に。これを受け、SPAは規制強化を進め、人気インフルエンサーであるヴィルジニア・フォンセカ氏も国会で証言する事態となりました。

海外の事例に学ぶ：過度な規制のリスク

ドイツやイタリアなど、広告規制を強めた国々では、結果的に闇市場の拡大を招いています。イタリアのように全面広告禁止を行った国では、合法業者が影を潜め、非合法業者がTelegramなどの非公式チャネルで急増する傾向が見られます。

広告は「合法性を示す証」となる

業界関係者は口を揃えて「広告こそが合法業者である証」と主張。18歳以上マークやリスク警告の表示を通じて、利用者に安心感を与えると同時に、違法業者との区別が明確になるとしています。

業界団体の分裂が議論の妨げに

現在、5つの業界団体が存在しており、議会側からは「誰の話を聞けばいいかわからない」との不満も。EstrelaBetのフェリッペ・フラガ氏は「まずは業界内で連携し、統一された声を持つことが必要」と述べています。

政治的偏見と誤解を超えて

一部の政治家は「ギャンブルは中毒や家庭崩壊を招く」との見解を強調しますが、現時点で国民の60%が陸上カジノの合法化に賛成しているという調査も出ています。Felipe Maia氏は「実態を知らないままイメージで語られている」とし、業界側の啓発が鍵を握るとしています。

未来に向けた選択：共存か排除か

今後の焦点は、法案が下院でどう扱われるか、そして業界がいかに団結して建設的な規制案を提示できるかにかかっています。自律的な広告規制や、透明性ある運用を打ち出すことで、政府との対話の糸口を掴むことができるでしょう。