XとPolymarketが戦略的提携、予測市場の未来を塗り替えるか？

イーロン・マスク率いるXがPolymarketを公式パートナーに指名

ソーシャルメディアプラットフォーム「X（旧Twitter）」が、予測市場サービス「Polymarket」との公式パートナーシップを発表しました。両社は今後、X上のデータやAI技術を活用し、リアルタイムで市場に影響を与えるような予測インフラの提供を目指すとしています。

この発表は、Xが直前まで提携予定だったKalshiとの契約を突如撤回してからわずか数週間後のこと。Polymarketの選出は、SNSと分散型市場の統合という新たな潮流を示すとともに、マスク氏と米政治の緊張関係を示唆する動きとしても注目されています。

統合プロダクトの詳細：「X×Polymarket×Grok」構想

今回の提携では、Polymarketの予測市場データにXのリアルタイム投稿情報、そしてマスク氏のAIプロジェクト「Grok」の分析機能を統合した新プロダクトが構想されています。これにより、仮想通貨や政治、スポーツなど多様な分野の「群衆予測」が、インタラクティブに視覚化されるようになるとみられています。

Polymarket CEOのシェイン・コプラン氏は、「Grokの洞察力、Xのスピード感、そして当社の中立的かつ正確な予測確率が合わさることで、ユーザーはこれまでにない“文脈付き予測”を手に入れることができる」と述べました。

米国での法的課題：CFTCとPolymarketの因縁

Polymarketは現在、米国では正式に認可されたプラットフォームではありません。2022年にCFTC（米商品先物取引委員会）との和解により、米国内のユーザーのアクセスをブロックすることで罰則を回避しましたが、同時に大規模な国際展開へと方針を転換しました。

この結果、2024年の米大統領選においては、数十億ドル規模の取引量を記録し、フランスの投資家がトランプ氏の勝利に賭けて約8,500万ドルの利益を得たという逸話も話題に。一方で、「ローマ教皇の死期」や「山火事の発生タイミング」など倫理的に問題のある市場も取り扱っており、批判も絶えません。

Kalshi撤退とトランプ陣営の関係性

Polymarketとの提携が決定する前、Xは一時期Kalshiとのパートナーシップを発表していました。しかし、発表当日にその提携は白紙撤回され、背景には政治的な圧力があったのではという憶測が飛び交いました。

Kalshiには、2025年1月からドナルド・トランプ・ジュニア氏が戦略アドバイザーとして参画しており、選挙の夜に「フェイクニュースよりも早く勝利を確信できた」とSNSに投稿していた過去があります。この事実は、XとKalshiの距離が縮まりすぎたことで政界からの警戒を招いた可能性を示唆しています。

エスカレートするマスク氏とトランプ氏の対立

今回の提携とほぼ同時期、マスク氏とドナルド・トランプ氏の間で激しいSNS上の応酬が勃発。共和党の支出法案をめぐる意見の相違から始まり、両者は互いのSNS（Truth SocialとX）上で非難を応酬しました。

マスク氏は「トランプ氏は私の資金がなければ当選していなかった」と挑発。これに対し、トランプ氏は「マスクが運営する企業への政府契約を見直す」と牽制しました。極めつけは、マスク氏がトランプ氏と故ジェフリー・エプスタイン氏の関係に言及する投稿です。

Time to drop the really big bomb:
@realDonaldTrump is in the Epstein files. That is the real reason they have not been made public.
Have a nice day, DJT!
— Elon Musk (@elonmusk), June 5, 2025

この発言により、両者の対立はビジネスと政治をまたいだ深刻な分断へと発展。Polymarketとの提携がその延長線上にあるのか、それとも純粋なビジネス判断なのかは、今後の動向次第です。

予測市場の未来を握るのは誰か？

この提携は、Xが単なるSNSの枠を超え、意思決定支援やマーケットセンチメントのプラットフォームへと進化する布石かもしれません。一方、法規制の未整備、倫理的課題、政治的な圧力といったリスクも依然として残ります。

今後、PolymarketとXがどのようなユーザー体験を生み出すのか、またKalshiや伝統的な予測市場がどのように反応するのか――「予測市場×SNS」の最前線に、全世界が注目しています。